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生きた、食べた、愛した。あなたは?【テオ・ヤンセン展inふくい】

今回は、サンドーム福井で10月27日(日)まで開催されている、「テオ・ヤンセン展inふくい」&クラフトエキシビションにてお話をうかがいました。

 

一見、RENEWとは関係ないように思えるかもしれませんが、実はRENEW出展者の多くが、この展示会を支えています。

 

 

 

テオ・ヤンセンってどんな人?

テオ・ヤンセンはオランダ出身のアーティストで、絵画・文筆家としても活動しています。彼がもっとも世界的な評価を受けているのが、「ストランドビースト(砂浜の生命体)」です。

 

風を受けて動き、生きているかのようなストランドビーストは、物理工学に基づく緻密な計算と、自らのデザインによって生み出されています。風の流れを読んだり、水辺を察知して危険を回避したりなど、本能ともいえる能力を宿しているそうです。

 

芸術と科学の領域を横断しながら、見たことのない可能性を提示し続けるテオ・ヤンセン。多くの功績から「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と呼ばれ、世界でもっとも偉大な芸術家の一人として活躍しています。

 

 

右下に写っているのが、「ストランドビースト(砂浜の生命体)」

 

 

「リ・アニメーション」―生きる、食べる、愛する。―

会場に到着すると、実演のコーナー「リ・アニメーション」がちょうど始まりました。実際にストランドビーストが動く様子を、約30分間の解説付きで見ることができます。

 

「どのように動くのかなあ」と軽い気持ちで進行を見つめていましたが、ストランドビーストのあまりの精巧さと生々しさを思い知らされるとは、このとき想像もしていませんでした。

 

「アニマリス・オムニア・セグンダ」

(以下、オムニア)

強風に対応できるよう、前長12mもの巨体を与えられました

 

 

「風を”食べて”動くって、どういうこと?」

「危険回避の能力ってほんとうにあるの?」

そんな疑問を抱きながら、解説に耳を傾けました。

 

オムニアの「胃袋」。空気を貯蔵し、生きる力へ変える

 

 

ストランドビーストたちは帆で風を受けながら生きていますが、移動にエネルギーを要する巨体なものには「胃袋」が授けられています。

 

オランダの強い海風を受け取り、自らの臓器へと蓄えていきます。

 

 

 

歩行に良好な風が吹くと、特別な回路がこれを感知。蓄えられた空気が帆を伸ばしていきます。

 

(※会場内は無風なため、スタッフが場面を想定してビーストに触れていきます)

 

 

身を固定する「杭」と、それを打つハンマー(オムニアの左端)

 

 

転倒しかねないほどの強風が吹くと、杭を砂浜に打ち付けて身を固定します。

 

ハンマーで何度も何度も打ち付ける様子は、動物が身を守ろうとする姿そのものでした。

 

オムニアの足元には、蝶々の口吻(蜜を吸う部分)のようなチューブが垂れ下がっています。水を吸い上げたとき「これ以上進むと、海にのまれてしまう」と判断すると、自分で逆方向へ歩き出すのです。

 

12mの巨体が、前後に動く様子をぜひ会場でご覧ください!!

 

 

オムニアの息遣いを、会場一体となって見守りました。

 

 

しっぽを振りあうビースト。

テオ・ヤンセンは、彼らの姿を「求愛行動」と名づけました。

 

 

ストランドビーストたちを、まるで生き物たらしめているものがもう一つ。

それが「求愛行動」、「繁殖行動」です。

 

とはいえ、彼らはビニールなどの物質で構成されているので、体内に新しい生命を宿すことはもちろんできません。

 

ではどんな存在が、彼らの子孫を残していくのか?

 

「展示会やYouTubeなどを通してストランドビーストを見た世界中の人達が、”ストランドビースト菌”に感染し、新しいビーストを作り出していく」

 

テオ・ヤンセンはそれをビーストの繁殖として定義づけ、実際に世界中のファンたちが、竹や鉄などで新たなビーストたちを作り出しています。

 

また会場内には、自分たちで動かせるビーストも展示され、ミュージアムショップでは、20センチの模型「ミニビースト」が販売されるなど、テオ・ヤンセンの頭脳と世界を体験できます。

 

世界中のファンによって、新たなストランドビーストたちが生まれ、進化し続けていくのです。

 

 

キャタピラの体躯を持った「アニマリス・カリブス」

 

 

ビーストたちはなぜ生まれた?なぜ一度死ぬ?

ストランドビーストたちは、「作者亡き後も、砂浜で自立し生き延びる生命体」を目指して制作が始まりました。

背景にあるのは、故郷であるオランダの海面上昇問題。テオ・ヤンセンは、アートと科学の切り口から、祖国の環境問題に対してメッセージを発信し続けています。

 

この世に生を授かったものが背負った宿命は二つ。

ひとつは「生きること」、もうひとつは「死ぬこと」です。

このストランドビーストたちも、これらを背負っています。

 

「リ・アニメーション」の冒頭では、こんな言葉がありました。

 

「役割を終えたストランドビーストたちは、”死”を迎えます。自分の意思で一度お墓へ向かい、安置され、化石になるのです。ここに展示されているビーストたちは、みな一度”死”を経験しています。」

 

化石になるということは、自分の意思で砂浜を踏めなくなるということ。

テオ・ヤンセンのアトリエにはストランドビーストたちの墓地があり、役割を終えたビーストたちが眠っています。お墓の土地はオランダ・デンハーグ市から寄贈されたもので、見学することもできるそうです。

 

そんなストランドビーストたちが再び命を吹き込まれるのは、展覧会などに出展されるとき。

今回のサンドーム福井展では、過去最大級となる15体のストランドビーストが集結しています。

 

 

求愛行動をしていたのは「アニマリス・アデュラリ」。

今回の出展によって、再び結ばれることができました。

 

 

全長7.5mの「アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス」。

胃袋、水感知を獲得した初期のビースト。

 

 

全長15mの「アニマリス・ペルシピエーレ・エクセルサス」が、

上空から会場を見守っています。

 

 

風を受け、うねうねと歩行する「アニマリス・ウミナミ」。

日本語の「海」と「波」に由来しています。

 

 

世界初!伝統工芸・越前和紙とのコラボビースト

そして今回の展覧会における最大の目玉が、現代のダ・ヴィンチ、テオ・ヤンセンと、福井県の伝統工芸「越前和紙」とのコラボレーションです!

 

和紙を制作したのは、滝製紙所の瀧英晃さんです。RENEWにも出展します!

(滝製紙所:http://renew-fukui.com/2019/kanri/exhibitor/echizenwashi-taki/

 

 

ふだんはパラシュート生地が使われる「帆」の部分を越前和紙で制作し、実際にオランダ・スフェベニンゲンビーチにて和紙の張り付け・ビーストの試走を行いました。

 

越前和紙とのコラボレーション作品

「アニマリス・オルディス」

風を発生させ、歩く様子を見ることができます。

 

 

越前和紙とのコラボレーション作品

「アニマリス・オルディス・クインタス」の帆

 

 

ストランドビーストとのコラボレーションは、越前和紙のみが可能な「大きな紙を漉く技術」によって実現しました。

 

上に写っている「アニマリス・オルディス・クインタス」の帆は、ヨーロッパの伝統的な折り紙「船」を7つ組み合わせて作られました。全て一枚紙の和紙で作られています。

 

 

越前和紙とのコラボレーション作品

「アニマリス・オルディス・クォータス」

風でたなびく越前和紙の帆に、思わず見とれてしまいました。

 

 

越前和紙の帆。強烈な浜風にも負けない強靭さを持っています。

 

 

福井県が越前和紙をPRするために何かできないかと考えたときに、ストランドビーストとのコラボレーションを考案したのが全ての始まりです。

 

テオ・ヤンセン氏にオファーを送り、サンプルを送ると「アートとして面白いチャレンジだ」として、プロジェクトがスタートしました。

 

越前和紙だけが可能な「ふすま」の技術が最大限に発揮され実現した、世界初のコラボレーション。

高いクオリティをストランドビーストに反映させることができる職人、産地全体のサポートがあってこそ、「世界初の伝統工芸とのコラボ」という奇跡が生まれました。

 

 

RENEW期間特別企画!ストランドビーストの「越前和紙の帆・取り付け体験」

RENEW期間中、うるしの里会館でチケットを購入した方限定で、サンドーム福井にて、越前和紙ストランドビーストの帆を取り付ける体験ができます!

 

▼開催日時:2019年10月12日(土)~14日(月・祝) 

①10:00~ ②15:30~

▼会場では一般受付も実施します。

①11:00~ ②12:00~ ③14:00~

▼チケット料金

一般:当日1000円

大学生:800円

(高校生以下無料)

 

本展覧会だけでしかできない、

越前和紙の帆を自分で取り付ける体験ができます!

 

 

ストランドビーストを手で押して、操ることができるかも?!

 

 

魅惑たっぷり。歴史もたっぷり

テオ・ヤンセン展には、ストランドビーストの歴史をたどるブースも併設されています。

 

ビーストたちの「臓器」。

 

 

構想が書かれたスケッチブックと、サンプル模型。

 

 

実際のアイデアスケッチ。

 

 

ストランドビーストの進化系統樹。

どんな能力を獲得してきたのか、事細かに書かれています。

 

Craft exhibition

また、伝統工芸の技と国際的アートのコラボ展・伝統工芸のセレクトショップやワークショップが集結する「Craft exhibition」も同時開催しています。

 

 

 

 

国際漆芸展「令和に集う世界の漆芸36歌仙展」には、越前漆器の職人が越前和紙に描いた漆絵が、世界の作家と肩を並べて展示されています。

 

同じく国際漆芸展「女性作家の創る漆装身具」15人展でも、越前漆器の「漆琳堂」や「越前漆器(KORINDO)」などの女性職人や作家が出展しています。

 

(漆琳堂:http://renew-fukui.com/2019/kanri/exhibitor/shitsurindo/

 

(越前漆器(KORINDO):http://renew-fukui.com/2019/kanri/exhibitor/korindo/

 

 

工芸セレクトショップ

RENEW出展者が多く出品しているだけでなく、テオ・ヤンセン展のミュージアムショップも併設しています。

 

和紙以外のコラボレーションとして、RENEW出展者の漆タンブラー、ステーキナイフなども公式グッズとして販売しています。

 

 

 

越前箪笥×遊具

越前箪笥の新しい可能性を開くため、遊具の製作にチャレンジしました。

 

試作品を製作したのは、RENEWにも出展している小柳箪笥店です。

 

(小柳箪笥:http://renew-fukui.com/2019/kanri/exhibitor/echizentansu-oyanagitansu/

 

 

 

 

「科学」×「アート」×「伝統工芸」・・・溢れる世界をご堪能あれ!

テオ・ヤンセン展では、「科学」と「アート」という異種空間を横断しながら、あなたを深い世界へとご案内します。

 

越前和紙の技が絡み合うことで、まさに福井”ならでは”の幻影的な空気が漂っています。

 

コンサート会場などとしておなじみの「サンドーム福井」。その会場が、ミュージアムとして開かれることは、なんと施設史上初だそうです!

 

現代の天才アーティストと、世界に誇る福井の職人技との融合。

ぜひあなたの目で、歴史的瞬間を確かめてください。

 

 

 

 

<イベント情報>

テオ・ヤンセン展inふくい&Craft exhibition

「風を食べて動く生命体。越前和紙と出逢い、今、動き出す。」

 

▼開催期間:2019年9月21日(土)~10月27日(日)

 

▼開催場所:サンドーム福井(福井県越前市瓜生町5-1-1)

 

▼入場料

一般:当日1000円

大学生:800円

(高校生以下無料)

 

▼「命を吹き込む リ・アニメーション」(一日5回、毎日開催)

実際にストランドビーストが動く様子を解説付きでご覧いただけます。

所要時間・約30分

①10:30~ ②12:00~ ③13:30~ ④15:00~ ⑤16:30~

 

▼RENEW期間限定のワークショップ

「うるしの里会館」にてチケット購入が必要です。

 

▼その他詳細につきましては、以下の公式ホームページをご覧ください。

https://theojansen-fukui.jp/

 

 

文:角野 健太郎