産地のくらしごとと、暮らすひと。 vol.2 【体験レポート】
ー くらしごとの卒業生のいま 編ー
※この記事は、2025年2月に執筆された記事です。
「産地のくらしごと2025」は、福井県越前鯖江エリアで開催されるお試し就業プログラム。ものづくりの仕事に正社員として挑戦したい人向けの約5日間の「作り手就職版」(3/10-3/13)と、複業や移住を考えている人向けの約3週間の「支え手版」(2/17-3/7)の2つがあり、実際に働いたり、地域の人と交流したりしながら、自分に合った働き方を見つけられるイベントです。
本記事では、昨年の産地のくらしごと2024に参加したのち、鯖江へ移住を決めたみずほさんとふーちゃんにお話を聞きました。

「産地のくらしごと」を経て移住した人:みずほ
出身:兵庫県
職業/所属:SAVA!STORE ショップスタッフ、PLAYCE カフェスタッフ(どちらもアルバイト)
経歴:2024年の産地のくらしごとがきっかけで移住。移住歴は半年。
趣味:さんぽ

「産地のくらしごと」を経て移住した人:ふーちゃん
出身:神奈川県
職業/所属:株式会社キッソオ 渉外
主な業務:デザイン業務、商品開発など
経歴:2024年の産地のくらしごとがきっかけで移住。移住歴は半年。
趣味:ビーズでアクセサリーを作る
くらしごとで地域に、鯖江に来るまでのこと
ーー「支え手就職版トライアルステイ」に参加しようと思ったきっかけは?

「スキルがなくても挑戦できる」―自分の可能性を広げるために
「前職を辞めて、好きなことにチャレンジしたいと思っていました。でも、どの業界に進むべきか決めきれず、幅広い職種を見ながら模索する日々だったんです。一度立ち止まって考え直そうと思った矢先に、もともと興味のあった手仕事に関われる機会を探し始めました。
興味がある地域活性系の職種などに申し込もうとしましたが、多くのプログラムが経験者向けで、自分の経歴では参加できないものばかり。そんな中で見つけたのが『くらしごと』でした。このプログラムはスキルがなくても参加できる点が魅力的で、『これなら挑戦できる!』と直感的に感じたんです。まさに唯一無二の機会だと思い、すぐに参加を決めました。」

「地方へ就職する気で飛び込んだ」—鯖江の街や人との出会い
「もともとは所属していた大学の教授からの紹介がきっかけでした。最初にRENEWのボランティアとして参加したのは大学3年の時。その際に関係者と連絡先を交換し、その後、大学4年の2月にも再び参加することになりました。
実はその頃、すでに内定先が決まっていたんですが、本当にその進路で良いのかについては悩んでいて…。そんな中で、新しい視点や経験を得るのは鯖江にあるのではと考え、鯖江で就職先をきめるつもりで産地のくらしごとに飛び込んだんです。」
越前鯖江に来て、おもうこと
ーー産地のくらしごとで、ものづくりの現場を体験して思ったことはありますか?

「職人の仕事=職業選択のひとつ」—ものづくりの現場で感じた発見
「もともと『手仕事は楽しそう』『手仕事にチャレンジしてみたい』という気持ちはありましたが、ものづくりにのめり込めるかどうかには葛藤がありました。
特に職人の仕事に対しては、『人生をかけなければならない』『私生活のほとんどを犠牲にするような厳しい世界』というイメージがあり、ハードルが高いと感じていました。
でも実際に鯖江で職人の仕事を体験してみて、その考えが大きく変わりました。職人の仕事は、平たくいえば特別なものではなく、地域に根付いた仕事のひとつであり、多くの職業の選択肢の中のひとつなのだと気づいたんです。
そのおかげで、仕事に対するハードルが下がり、『自分もものづくりにのめり込んでいいんだ』と思えるようになりました。」
ーー鯖江に来るまでの不安はあった?実際に来て感じたギャップなど

「就職目当てで挑んだ3週間」—不安なしで飛び込んだ職探しのリアル
「正直、不安はありませんでした。完全に就職を目的に参加したので、企業を選びながら就職活動を進めるつもりでいました。
実際にプログラムが始まってみると、担当の方が私の要望を真摯に聞いてくださり、本来は一社のみの就業体験の予定でしたが、2二社以上の体験をさせてもらいました。これは就活サイトや一般の求人情報では得られない貴重な経験で、すべてが発見の連続でした。
私はもともと、ものづくりの仕事の中でどこにストレスを感じるかを理解していたので、自分のやりたいことや理想の働き方をイメージしながら体験に臨みました。その結果、より具体的に『ここで働く自分』を想像できるようになりました。
最終的に2社で迷いましたが、デザインや商品企画など幅広く携われること、そして『自分の思い描いていたことがすべて実現できる』と感じた今の会社への就職を決めました。
納得感を持って働けているきっかけはくらしごとがあったからだと思います」

「わたしはどっち側の人間?」—探しに行った先で見つけた、自分の立ち位置
「私は真逆。笑 すごく不安だらけ。自分が満足する働き方を探さなきゃ、行ってみよう。そう思って、すぐに申し込んで参加を決めたものの、参加者の多くは大学生で、社会人の私とは少し違う立場。しかも、ここにいる人たちはみんな、自由に生きているように見えるけど、実はすごく賢くて、しっかりとした軸を持っている人ばかりでした。
周りを見渡すと、フリーランスで働いている人も多く、正社員じゃない生き方を当たり前に選んでいる。私は『そんな働き方、不安じゃないんですか?』と聞いてみたけど、みんな『普通の会社員生活は無理だから』と、あっさり答えるんです。その割り切り方や、自分の選択に対する覚悟を見て、私は『私はまだそこまでの勇気を持てていないかもしれない』と感じました。
かといって、私は会社員として働くことも苦痛ではなかった。仕事にやりがいを求めず、割り切って働く選択もできたかもしれない。でも、私はやりがいを求めてしまうし、人間関係にも敏感で、周りの環境が自分に与える影響も大きい。
そんな自分が、ここに来たことで気づいたのは『私はこっち側の人間ではないのかもしれない』ということ。でも、会社員生活も完全には合っていなかった。
どっちにも属していない——そんな自分の立ち位置に気づいた瞬間は、少ししんどかった。けれど、どちらにも当てはまらないからこそ、自分だけの働き方を模索するきっかけになったのかもしれない。」
ーーくらしごとを経て、鯖江で働くことを選んだ理由は?

「決めなくてもいい」—迷いながら越前鯖江に生きる選択
「都会だったら、決めなきゃいけないプレッシャーがすごくある。でもここでは、迷っていても大丈夫って思える環境があるんです。」
私が彼女が感じたのは、「決めていない状態を許してくれる場所」の存在だった。
「都会だと何も言われていなくても、仕事や居場所はどこかを決めないといけないような気がしてしまう。でも、ここでは『どうしようかな』と思っていても、周りが責め立てることはない。だからこそ、模索しながらでも続けられる。」
今も続く「模索」、迷うことを耐えられるようになった「変化」
「今も将来については迷い続けています。だからこそ、アルバイトという形で働いています。決めきれないから。でも模索するには最高の環境なんです!」
「福井じゃなかったら、福井を出る。でも何かがここで見つかれば、ここにいる。そんなふうに思える場所です。」
「何も決めていない状態に耐えられるようになったこと、それが一番の変化かもしれません。」
ーー支え手ってどういう役割だと思いましたか?
「支え、支えられる」—鯖江で気づいたつながりの形
「私が鯖江に来た理由も、ここで暮らしていていいなと思うことも、ほとんどが“人”なんです。仕事がどうこうよりも、ここにいる人たちに支えられてきたことが大きいですね。」
考え続ける人たちの集まり
「ここにいる人って、割と紆余曲折を経てきた人が多いんです。何かしら悩んだり、選択を繰り返してきた人たち。その分、話をすると人生の経験談を聞かせてもらえたり、相談に乗ってもらえたりする。そういう環境がすごくありがたいなと思っています。」
「しかも、日常的にも本当に助けてもらっています。私は車を持っていないので、誰かにスーパーに連れて行ってもらったり、イベントに連れて行ってもらったり。『誰か自動車ちょうだい』って言ったら、誰かが本当にくれたり(笑)。そういう支え合いがすごく自然にある場所なんです。」
「もらったものを返す」が支え手のかたち
「今、自分が仕事を通して産地に貢献できているかはまだ分からないんです。ただのアルバイトをしている感覚もあって。でもSAVA! STOREの仕事では、“産地のことを伝えたい”という思いがあるので、お客さんにできるだけ話をするようにしています。」
「でも、それが本当に産地のためになっているのか、売り上げにつながっているのかはまだ実感できなくて…。だからこそ、今の自分にとっての“支え手”は、自分がここで支えてもらったことを、新しく来た人に返していくこと。支えられた分を次の人に受け渡していくこと。それが、私にとっての支え手なのかもしれません。」
「ただ暮らしているだけかもしれないけど、ここにいること、それ自体が支え合いになっている気がしています。」
ーー「産地のくらしごと」に参加するか悩んでいる人へメッセージを!


「とりあえず来てみたらいい」—職業の選択肢が揃っている場所
「越前鯖江には、行政の仕事もあれば営業や企画、デザイン、職人、食に関わる仕事もある。見えにくいけれど、プロジェクトマネジメントやイベント運営の仕事もちゃんとある。だから、ちょっとでも興味があるなら、とりあえず来てみたらいい。何かしら、自分に合うものが見つかるはずだから。」
「例えば、『木に関わる仕事をしたい』と思ったら、材木業だけじゃなくて、木工職人やデザイン、イベント運営の道もある。『お米に関わりたい』なら農業はもちろん、商品開発や地域振興の仕事もある。越前鯖江には、キーワードを手がかりに“派生できる仕事”がたくさんあるんです。」
「この町には答えがある」—迷っている人にこそ来てほしい
「働き方に悩んでいる人、自分のやりたいことがぼんやりしている人でも大丈夫。『なんとなく自然に関わりたい』『楽しいことがしたい』そんなざっくりした動機でもいい。この町には、その答えがたくさん転がっているから。」
「都会のような働き方もできるし、のどかな田舎暮らしも選べる。ここで、自分なりの働き方や生き方を探してみるのもいいかもしれません。」
環境がもたらす「やってみよう」のハードルの低さ
「ここでは、とりあえず何かを始めることへのハードルが驚くほど低い。
例えば、私が仕事をしていた大阪で何か商売を始めようとすれば、行政の手続きや資格取得など、クリアしなければならない課題が山ほどある。でも鯖江では「まずは試しにやってみて!ダメならやめる!もしくは改善しよう!」といった柔軟なスタンスがある。
言葉で『何でもできる場所』って説明するのは簡単だけど、実際に来てみないと分からない。だから、とりあえず来てみてほしい!でも『とりあえず来て』って無責任に言うつもりはない。呼ぶからには、それなりの責任があると思うし、全員が全員、ここでしっくりくるとは限らない。でも、少なくとも来てみたら、自分にとっての選択肢が広がるかもしれない。」
「呼ばれる場所」ではなく「自分で声をかける場所」
「くらしごとの担当者はとても真摯に接してくれるし、受け入れる姿勢だけでも学びはあるけど、来た人が自ら動いて、誰かに声をかければ、それに応えてくれる人はたくさんいる!私含めて。笑 動き出すきっかけはいくらでも転がっている街なので。」
ーーさいごに
1mmの勇気が未来を変える——まずは来てみる
「興味を持っているなら、とりあえず来てみればいい。」
この言葉が、鯖江での暮らしや仕事に迷う人々へのシンプルなメッセージ。
「来る理由がなくてもいいし、悩んでなくてもいい。やりたいことがあってもいいし、まだ見つかっていなくてもいい。」
多くの人が、自分の生き方や働き方に疑問を持つ瞬間がある。そして、その答えを探すのに「来る理由」や「選ぶ理由」が必要だと考えてしまいがちだ。しかし、この地ではそんな理由をあえて必要としない。
興味を持っているなら、それだけで十分。来れば、相談できる人がいるし、ヒントがたくさん転がっている。この文章を読んでいる時点で、きっともう何かしらのきっかけを掴んでいるんだと思います。
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産地のくらしごとと、暮らすひと。 vol.1 【体験レポート】はこちらから
