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和紙の100年、200年。くらしから伝統を見つめる【山次製紙所】

独自の「浮き紙」という技法で漉いた立体的な模様の和紙。
この色鮮やかな和紙を使用した茶缶や紙箱でご存知の方も多いのではないでしょうか。

それらを作っている山次製紙所にお邪魔しました。

和紙が使われている茶缶


山次製紙所について

山次製紙所は明治元年創業の美術小間紙の製紙所です。
美術小間紙とは、越前和紙固有の技法を用いて模様をつけた紙のこと。
和小物、千代紙として用いられることが多いです。
工房には、繊維を金型に引っ掛け、和紙に付着し模様を施す「引っ掛け」という技法で作られたカレンダーが飾られていました。
現在は、日本酒のラベルに使われる和紙をメインに制作しています。

ひっかけという技法を使って作られているカレンダー。絵の輪郭が白く毛羽立っているのが特徴です。


日本酒のラベルに使われる和紙


産地と越前和紙

この山次製紙所がある越前市今立地区は、多くの和紙屋が立ち並び、エリアに入った途端に歯医者さんのような独特の匂いが立ち込めます。
匂いの正体はホルマリンでした。
和紙づくりに必要な植物「トロロアオイ」のネバネバを保つためにホルマリン漬けにするそうです。
多くの和紙屋があるため、街全体がこの匂いなんですね。

これがトロロアオイ。


今立地区で作られる和紙を越前和紙といい、1500年の歴史を誇ります。
そのはじまりは、川上御前伝説として残っています。
きれいな女性が突然あらわれ紙漉きを教えて突然消えたというもの。
その女性を祀る岡太(おかもと)神社がこの地区を見下ろす位置に佇んでいるせいか、地域全体に一体感が感じられます。

川上御前が祀られている岡太(おかもと)神社。


機械と人間

工房を説明してくださったのは山下寛也さん。


工房に入ってすぐに、ひっかけという技法のやり方、手漉きに使う道具、仕事の流れの説明をしていただきました。
すぐ横には仕事中の職人さんが。
和紙を漉き、機械にのせて、乾かす、という工程を目の前で見ることができました。


作業中の職人さん

和紙が乾いたら機械でお酒の名前が印字されます。
そのとき、和紙が曲がっていると印字がずれ、クレームの原因になるそう。

伝統的なやり方では、漉いたものを乾かす台(床台)にのせる時に上下をひっくり返します。この時に歪みが生じやすいので、山次製紙所ではひっくり返さないやり方を生み出しました。

紙を漉いてから…


床台に置きます。

「今のデジタル化にぼくたちが合わせなきゃいけない」

機械は、和紙が曲がっていようがまっすぐだろうが、100%真っ直ぐに印字するので、それに合わせて人の手で全く同じものを作らなくてはなりません。

しかし山下さんは、人の手が加わらないとよいものづくりにならない、とも考えています。

需要や時代に合わせて方法を変えながら、人の手を通して作ることにこだわる姿から、機械との共存のあり方が垣間見えました。


守るだけではなく、続ける

工房や和紙の説明をしながらも、産地やお仕事への思いが言葉に溢れていました。
「伝統は人間国宝が守ればいい」
衝撃的な言葉に聞こえますが、それはわたしたちが伝統というものを曖昧に捉えすぎていたからかもしれません。
「自分たちの仕事のやり方は邪道だ。
食べていくために、生き残るために、より多く生産するために生みだした手漉き量産型をやっている。それでも伝統工芸が産業として生き残っていくために常に改善を行って100年200年を見据えなければいけない。」

洋紙が和紙に100%変わることはないと断言し、どうすればいいかを考える山次製紙所。そうして生まれたのが茶缶や紙箱でした。


和紙の蓋の紙箱。名刺がピッタリ入ります。



伝統は、日常として続いてはじめて伝統になるのだということを気づかせてくれます。
和紙が日常に入ってこないと、和紙の伝統を守ることはできない。
伝統工芸を守るということは、単に守るだけではなく、続かせる未来まで見るということです。

生活に取り入れやすい茶缶に和紙を使った。


山次製紙所が見据えるこれから

茶缶や紙箱の影響か工房に訪れてくれる人も増えているそう。
それは嬉しい反面、対応をしてる間は仕事ができない。
言葉で和紙を伝えられるのは嬉しいけど「和紙屋でありたい」という思いと相反します。
そこで、今後は工房の隣に伝える役目を果たすショップを建てる計画をしているようです。

伝統工芸は伝統だから残っているのではないのです。
残るために、形を変えながら生活に入り込んでいるから、残っているのです。
100年200年先を見据える山次製紙所が、今なにをしているのか、ぜひRENEWという機会に見てみてください。

<出店者紹介>

山次製紙所
〒915-0234 福井県越前市大滝町29-5
TEL:0778-42-0553
紹介ページ:https://renew-fukui.com/exhibitor/echizenwashi-yamatsugi/

RENEW期間中の営業時間:12,13日 9:00~17:00、14日 9:00~16:00

文:久田羽南