NEWS

駆け込み寺のような存在に【丸廣意匠】

今回は、木地への塗装を専門に行う工房「丸廣(マルヒロ)意匠」についてご紹介します!

 

 

そもそも塗装って?

私たちの身の回りには塗装が施されているものが溢れています。

塗装とは、一般的には装飾や保護のために、塗料を塗ったり吹き付ける作業を指しますが、

その対象は、金属やプラスチック、木材など様々です。

 

 

しかし、木材に美しく質の高い塗装を施すのはとても簡単なことではありません。

なぜなら、木材は自然の素材であるがために、硬い部分や柔らかい部分の一つ一つに性格があるからです。綺麗にする為に使用する作業用の道具で、逆に木の素材を傷つけてしまうこともあります。

そして何よりも、木材は木目によって水分の吸収にムラがあります。

そのため、木地に美しく均一に塗装を施すのは至難の技。


しかし、そこに挑戦しているのが丸廣意匠!

 

 

まるで漆塗りのよう

 

これ、本当に塗料なんですか...?

 

丸廣意匠さんの製品を初めて見たときの感想がそれでした。

本当に塗料とは思えない、光沢とムラの無い仕上がり。

まるで漆塗りのようです。

 

木地を磨き、下塗りと中塗りを行なってから最後に上塗りをするという流れで出来上がります。作業工程は漆塗りと似ていますね。

 

女性のスタッフさんがヤスリがけからキズ見までを行い...

 

 

最後に廣瀬さんが上塗りをします!

 

 

 

塗料で仕上げる難しさ

「ちょうど今朝、今まで1番大変な仕事が終わったところなんです。挑戦させて貰えたお仕事なので、完璧ではないんです…。でも、やり直しをしたらもっとひどくなるかもしれません。」と、なんと特別に仕上がったばかりのものを見せていただけることに...

 

 

とても大きな板!「真塗り」という作業で仕上げられたものだそうです!。

(真塗りとは、黒の漆塗りのことを指します)

 

ムラ無く塗られた黒い表面はツヤツヤで美しく、覗き込むと鏡のように顔が映ります...!

 

自分の顔を映すRENEWスタッフと廣瀬さん

 

 

なんとこれは、作家さんがこれから沈金をするための板なのだとか!

(沈金とは、漆面に刃物などで文様を彫り、そこに金箔や金粉を押し込むという、装飾技法です。)

 

本来、沈金をする板は漆塗りで作られるのが基本なのですが、それが塗装によって、漆塗りとしか思えないような美しい色と光沢が作られる事実にとても驚きました。

 

 

このようなムラのない均一な面にさせるのはとても大変なのだとか...。

 

塗料は、塗ってすぐ1〜2分後には表面がにちゃにちゃと乾いた状態になっていきます。それまでの間についてしまったホコリをとりのぞかなければなりません。その状態からゴミなどを付けずに綺麗な状態を保たないといけないため、細心の注意を払わなければいけません。

 

それに加え、漆の場合は最後に磨く(呂色)という工程で光沢を出していきますが、塗装の場合それがないため、1回の塗装で美しい面を仕上げなければいけないのです。

 

最後の塗りは、仕上がりの美しさを左右するとても重要な作業。

職人の腕が試される瞬間です。

 

 

自分達に出来ることを

 

「仕上がりを見て、漆のようだと言ってもらえると嬉しい」

 

と仰る廣瀬さん。「少し漆に近づけた」という気持ちになる、と。

以前まで「漆に負けない!」というぐらいの気持ちで励んで来られたのだそうです。

しかし、現在は「漆でないといけない所に無理に入ろうとしても駄目」という考えに変わったそうで、

 

 

「漆塗りじゃなければ駄目な漆の世界がある。」

 

「しかし、漆塗りのような塗装が必要とされる場合もある。」

 

廣瀬さんはそう仰っていました。

 

漆塗りに近づけたいという気持ちを持ちながら、「塗装」という分野に出来る最高の仕事を行う。

それが、丸廣意匠魅力を作り出しているのではないでしょうか。

 

 

駆け込み寺のような職人に自分もなりたい

 

廣瀬さんは職人になる以前に、この漆器の業界で営業の仕事を10年もされていました。

営業は、お客さんと職人さんをつなぐ大切な役割です!

 

その際に、様々な人たちに助けてもらった経験が、現在の仕事にも影響している、と廣瀬さんは仰います。

 

 

営業時代、品物の注文を受けたものの、納期の時間も無く、どの工房にも受け入れてもらえず、困り果てる状況が何度もあったそうです。

どこにも取り合ってもらえないまま納品の期限だけが迫る...。

そんな際迫った状況の中。でもいつも最後に手を差し伸べてくれる職人さんが、各分野にいたと言います。

まさに駆け込み寺のような存在でした

 

自分は駆け込み寺に何度も何度も助けていただきました。と、廣瀬さんは言います。

 

「マルヒロだったらなんとかしてくれる」

 

今度は自分がそんな駆け込み寺になろう!

 

今はそんな想いで仕事を引き受けているそうです。

 

そんな現在でも、廣瀬さんには沢山の駆け込み寺があって、今でも駆け込んで教えて頂いたり、お願いを聞いてもらったり・・・。

 

そう、廣瀬さんにとって河和田はとても魅力的なまちなのです。

 

 

「自分がいなくなった時に、残念だと思ってもらえる仕事をしたい」

 

そう話す廣瀬さんの目には、静かな熱が込められていました。


「塗装」という分野だからこそ感じてきた苦労や努力、人との繋がりなど、これまで積み重ねてきたものの厚みが、今の丸廣意匠作り上げているのです。

 

 

RENEWに向けて

 

RENEW期間中は、工房見学を行います!。

実際に塗りの作業の様子も見ることも出来ますよ!

「自分たちの仕事に興味がある人が1人でもいたらとても嬉しい」

 

「この仕事のどんな部分に魅力を感じたのか聞いてみたい」

 

と廣瀬さん。

 

漆器のような美しさ。しかし、それを塗料で行う故の努力と情熱。

丸廣意匠魅力にあなたも触れてみませんか?

 

<出店者紹介>

丸廣意匠

〒916-1237 福井県鯖江市北中町535

TEL:0778-65-2209

RENEWページ:https://renew-fukui.com/2020/kanri/exhibitor/丸廣意匠/ 

RENEW期間中の営業時間:

10月12日(土)~14日(月祝) 9:30~17:00 

 

文:清野 愛理