NEWS

笑顔と色気の、陶芸道。【桃山窯】

今回は、越前陶芸村にある「桃山窯」(とうざんがま)についてお伝えします。

緑の山に囲まれた、時間がゆっくり流れる工房です。

(京都高島屋で開催された個展にて。)

お話をうかがったのは、陶芸職人・木村好博(よしひろ)さん。

京都高島屋・大丸百貨店などの個展も多数開催しており、

数々の作品を世に送り出してきた職人さんです。

そもそも陶器とは、「石を砕いた粉を練り、焼いて出来上がるもの」。

福井の「越前焼」における歴史は古く、平安時代にまで遡るといわれています。

表面には何も塗らず、薪の灰などから風合いを生むのが特徴。

一方で木村さんは、ここに釉薬(ゆうやく)を塗り、

温度や焼き方を工夫することで多彩な作品を作っています。

(※釉薬:金属や灰などを水に調合した液体)

「福井県において、陶芸の自由度は高いんです。」

「オリジナルが受け入れられ、今でも新しい焼き物が作られています」

昭和51年の独立時から、木村さんは伝統への挑戦をスタートさせました。


練 ―かたちづくる―

はやる気持ちを抑え、まずは「ろくろ」がある工房へ…!

機械用オイルの匂いがほのかに漂い、職人の作業場を感じさせます。

制作中の器たち。漬物樽に入っているのは釉薬。

ろくろ台の後ろには「レジャーベッド」が。

「ときどき、ここで寝そべるんです。」和やかに話す木村さん。

取材スタッフからも笑いが起こりました。

手作りの道具を持ち、ろくろを動かし始めると、木村さんの表情が一変。

生地をいっしんに見つめる、柔らかくも鋭い眼光。

熟練された技術でかたどられていく生地。

職人のまぎれもない「目」と「背中」からは、無数の色気が放たれていました。



焼 ―魂を込める―

いよいよ、仕上がりを決定づける「窯」の工房へ。

焼く瞬間を今か、今かと待ち構える三つの窯。

取材当日はろくろの稼働のみだったので、ひっそりとたたずむ窯たちを

じっくり見つめることができました。

作品によって、火力が強いガス窯・安定性がある電気窯を使い分けます。

扱う窯は用途によって変わるんですね(個展用はガス窯、日用品は電気窯)。

時代の変化に沿ったものづくりが続いています。

(扉が空いた二つがガス窯、右手前が電気窯)

焼き方は、大きく二つ。

一つ目は「酸化」。窯に空気を送り込みながら焼きます。

二つ目は「還元」といい、空気を入れずに焼く方法。

窯から豪快に炎が吹き出すそう。一度は見てみたい…!!

もし、出来上がりに納得がいかなったり失敗してしまった場合は、

やむなくハンマーでたたき割り。

破壊した陶器は再利用できないため、再び生地を作るところから始まります。

「全行程の中で一番緊張するのが、窯を開ける瞬間です。」

木村さんはそう語りました。

ゆったりとした口調で、それでいて経験を噛みしめるような表情が忘れられません。




培われてきた技術と経験

追求をやめることなく歩んだ、43年間の陶芸人生。

長石、石灰石…。様々な種類の石を手に取って確かめます。

デザインは木村さんご自身で考案され、後から絵付けをする場合は奥様も手伝います。

二人三脚によるものづくりで、企業様はもちろん、お客様のオーダーも1個から受け付けています。

職人さんたちを支えているのは、たしかな技術と経験。

受け継がれてきた手法に、それぞれの技法・スタイルを刻んでいきます。

木村さんにとって、自作のサンプルボードは制作の”ものさし”。

釉薬の調合・焼き方の種類…。

試行錯誤によって、作品の幅を広げ続けてきました。

まさに千差万別の仕上がり!

横から見ると、サンプルの中央はどれも膨らんでいます。

「焼けた釉薬の”垂れ具体”も計算するためです。」

う~~ん…奥が深い。木村さん、お話ししながら楽しそうです!!

ピンクやグリーンにも…!もう変幻自在です。

「落ちている石に触れれば、どんな仕上がりになるか経験で大体わかります。」

この一言に、どれほどの時間が横たわっているのでしょうか…。




受け継がれる師匠の思い

木村さんが薫陶を受けた師匠は、なんと92歳まで現役でした。

一作品が数百万円の値で売れるようになっても決して贅沢せず、

芸の研究に全て費やされたそうです。

よりよい陶器をつくる。そんな師匠の想いを受け継いでいますが、

「売る前提でお客様を迎えたくはありません。」と話します。





乗り越えた歴史、問われる価値。

かつては、絶滅の危機があった越前の陶芸。

自由度の高い陶芸を誘致したことで、産地には寛容さが広がりました。

作り手がそれぞれの思いを吹き込み、独自の文化を醸成してきたのです。

「どこかに、陶芸が生き残っていく道があるはずです。」

お客様とコミュニケーションをとることで、作品に受け継がれてきた歴史・息遣い・バックグラウンドを、まずは感じてほしい。

「価値を分かったうえで買ってくださる方がいたとき、とても嬉しいですね。」

越前の土で命を宿し、幾多の試練を乗り越えてきた越前の陶芸。

にじみ出る「陶芸道」が、あなたに真の価値を問いかけます。

▼RENEW期間中は、工房見学および陶器の購入ができます。

職人さんとの会話を楽しみながら、陶芸の奥深さ・息遣いを味わってください。

<出店者情報>

桃山窯(とうざんがま)

〒916-0273 福井県丹生郡越前町小曽原16-22

TEL:0778-32-2552

紹介ページ:https://renew-fukui.com/2021/kanri/exhibitor/momoyamagama/

RENEW期間の営業時間:10月12日(土)~14日(月祝) 10:00~17:00

玄関のインターホンを押してください。お迎えいたします。

※お車でお越しの方へ

駐車は「桃山窯前」か、「越前陶芸村の駐車場」へお願いいたします。

文:角野 健太郎