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これからのRENEWを考えるため、RENEWのはじまりを探る【谷口眼鏡】

 

「これからのRENEWは、ものづくりは、どうなってしまうのか?」

今年4月にRENEW事務局に着任してすぐ、私が率直に感じたことです。

 

初めまして、RENEW事務局の西澤悠人と申します。

感染症の流行で私たちの暮らしが大きく変わる中、ものづくりの町にも大きな変化が訪れています。

先日、打ち合わせをした漆器や和紙の職人さんは、「全然電話が鳴らない」つまり「全然発注がない」のだと言います。一緒にシェアハウスに住む職人の友人も勤務が週3日になるなど、感染症の影響はすぐ身近に迫っているようです。

 

町も、産業も、RENEWも、何かを変えなければならない。でも、何を?

変えることを考えるためには、まずは絶対に変えられないことを知る必要があると感じました。

昨年はお客さんとして参加しただけのRENEWをより深く知るため、大切な根っこの部分を、RENEWの始まりから紐解いていきます。

 

お話を伺ったのは、RENEW実行委員長を務める谷口康彦さん(谷口眼鏡社長)です。

 

▽RENEWって何?という方はまずはRENEWの公式ホームページをご覧ください。

https://renew-fukui.com/2021/kanri/about/


中央:谷口康彦さん、左:西澤悠人(RENEW事務局)、右:村上捺香(RENEW事務局)

 

実は、昨年のRENEWで谷口眼鏡さんの「めがねづくりワークショップ」に参加しました。担当してくださった職人さんたち全員から、とても柔らかな雰囲気を感じたことを覚えています。

今回、谷口さんの穏やかな話し方を聞いて、きっとこの社長の元に集まった人たちだからこその空気感なのだろうなと感じました。

 

谷口眼鏡は、鯖江市河和田地区にて60年続く眼鏡工場。下請けだけでなく、「よりそう」をコンセプトにオリジナルブランド「TURNING」と「tesio」を展開。

谷口眼鏡の2代目である谷口さんは、RENEW実行委員長として、河和田地区の地区会長として、新しい風を吹き込ませる若者たちの下支えと後押しをしています。

 



▽谷口眼鏡と谷口さんについての詳細は以下の記事をご覧ください。

https://renew-fukui.com/2021/kanri/2019/2019/10/05/shuzaikiji-taniguchi-gankyo/

 

職人の意識が大きく変わった初めてのRENEW

RENEWのすべての始まりは2014年11月、鯖江市河和田地区を盛り上げるための有志の集まりでした。

当時の河和田地区の漆器・眼鏡産業は、バブル全盛期と比べ、出荷額・事業者数ともにほぼ半減。相当の閉塞感が産地を取り巻いていたそうです。

そこに強い危機意識を抱いていたのが、当時、鯖江市役所の臨時職員をしていた新山直広さん。

 

新山さんは、2009年に大阪から鯖江に移住。現在は、RENEWのディレクター・鯖江市河和田地区のデザイン事務所TSUGIの代表を務めています。。TSUGIでは「創造的な産地を作る」をビジョンに掲げ、産地企業のブランディングや自社ブランドの運営などに取り組んでいるとのこと。

 

新山さんは谷口さんたちとの集まりの直前に「工場の祭典」というオープンファクトリーイベントを訪れていました。ものづくりで地域が活気づく様子を見て、「これしかない。」と、ものすごい熱量だったそうです。

 

谷口さん自身は「工場の祭典」を見ていたわけではありません。しかし、産地をどうにかしたい気持ちは新山さんと同じ。そこで、地元の人たちに、せめて一回実施させてほしいと伝えてまわり、河和田地区のオープンファクトリーイベント・RENEWを開催に導きました。

 

2015年に行われた第1回目の来場者数は1,200人。初年度の出展社は21社だったので、一社当たりの来場者数はおよそ60人。これは決して大きな数字とは言えません。

しかし、RENEWをきっかけに職人たちの意識は前向きになったそうです。


 

事務局としてもどうなることか不安だったそうです。が、はじめは工房見学に不安を隠さなかったとある眼鏡屋さんも、一般のお客さんに仕事の様子を見てもらう機会を初めて得て「本当にやってよかった」の一言。

 

お客さんからあれこれと質問を受けているうちに話は盛り上がり、気づけば見せる予定のない大きな機械まで引っ張り出したそうです。

「来年はワークショップもやろうと思ってるよ。」谷口さんはその笑顔に、河和田地区が再び元気になる可能性を見出しました。

 

RENEWが目指す「持続可能な地域づくり」とは

谷口さんをはじめとする事務局にとって、RENEWの転機は2017年。中川政七商店とコラボをしたときのことでした。

来場者数は前年2016年の2,000人から、なんと21倍の42,000人。

より多くの人に知ってもらったことをきっかけに、RENEWが大切にしたいことを改めて真剣に考えたと言います。


 

RENEWが目指している「持続可能な地域づくり」。そのために必要なことを2つ、谷口さんが教えてくれました。

 

・訪れる人たちに、「お客さん」から「ファン」になってもらうこと

・地域の人たちには、自分たちのものづくりに自信と誇りを持ってもらうこと

 

この2つは相互に影響を与え合うものだと言います。

職人が丹精込めたものづくりをするからこそ、お客さんはファンになる。使い手があたたかくも厳しい目で作品を見極めるからこそ、作り手は自信と誇りを持ってよりよいものを作る。

地域の内側と外側、その両方から産業を発展させていくことが「持続可能な地域づくり」には不可欠なのです。

 

確かに昨年のワークショップに参加して以来、私はすっかり谷口眼鏡のファンになっています。

自分たちの技術に自信を持った職人さんたちから教わって自分の手で組み上げた眼鏡は、世界に1つしかない自分だけの宝ものです。そして、そんな特別な体験をさせてくれた谷口眼鏡には強い思い入れが生まれました。

 

谷口さんからお話を聞いたことで、今年の私が事務局として取り組むべきことが見えました。それは、いかにして昨年の自分と同じような体験をする人を増やせるか、ということです。

今年は感染症の影響で工房見学をはじめとする通常の開催が危ぶまれていますが、今の私たちにできる精いっぱいを尽くしていきます。

 

共につくろう、変わり続けるものづくりのまちを

RENEW事務局として、5月10日現在にお知らせできることが3つあります。

 

・オンラインコンテンツを中心に開催

・開催期間は10/9( 金)-11(日)の三日間

・従来の工房見学やワークショップなど、対面イベントの開催判断は6月末日

 

感染症の影響こそあれ、RENEWは、福井のものづくりは、前を見据えています。

事務局内での話し合いを重ねており、今後の取り組みは追ってお知らせしていく予定です。

 

とは言え、これから取り組んでいくことすべてが産地にとって初めての体験となります。

ほんの少し前までFAXを使っていた工房さんと、Zoomを使ったオンラインの会議をしようとしているのです。テストでは、Zoomをつなぎながら、同時に電話で操作方法を伝えました。正直、会議が滞りなく進むかどうか、不安な気持ちが9割です。

 

しかし、着実に、変わり続ける機運は高まっています。

ものづくりのまちは、変わり続けようとしています。

 

変わり続けるものづくりのまちの様子は、今後もSNSなどを通じて発信していく予定です。

どうか今後のRENEWをお楽しみにしていただくと同時に、私たちの動向をフォローしていただけると幸いです。

 

Instagram:https://www.instagram.com/renew_fukui/

Twitter:https://twitter.com/renew_fukui

Facebook:https://www.facebook.com/renew.kawada/

 

<出展者紹介>

谷口眼鏡(たにぐちがんきょう)

〒916-1221 福井県鯖江市西袋町228

TEL:0778-65-0811

 

文:西澤悠人